2006年05月11日
2006.5.11 献血敬遠と戦争の「ミスマッチ」
『モンティ・パイソンズ・フライング・サーカス』の第1シリーズ第8話に
「1969年いまどきの軍人」というスケッチがある。
英国陸軍のオフィスで、厳格そうな大佐(グレアム・チャップマン)が執務していると、
ワトキンスという若い軍人(エリック・アイドル)がやってきた。
そして、入隊してたった一日しか経たないのに、もう辞めたいという。
その理由は、
「戦争が起きたら行かなきゃならないでしょ? 怪我をするかも知れないし」という。
「なら、どうして入隊したんだ?」と、呆れた顔で問いかける大佐に向かって、
「水上スキーと旅がしたくて‥‥‥」という返答。
さらには「人を殺すのが嫌なんです!」とも。
「平和主義者なのか?」と尋ねられると、
「いいえ、おくびょうなんです!」と胸を張った。
このスケッチに用いられているテクニックは、
昨日も取り上げた「ミスマッチ」です。
ある特徴的なシチュエーションに、それは絶対に水と油という発想や物事を持ち込むと、
コメディができるというわけですね。
①シチュエーション × ②似つかわしくないアイディアやモノ=コメディ
実は、その手のミスマッチなコメディは、毎日のようにニュースとして登場します。
昨日は、
「献血敬遠は針が痛いから」が、わかりやすかったですね。
あと、この種類の現実のコメディには、
モンティ・パイソンもビックリな空前のスケールのものも多く、
『あの戦争は何だったのか?』(保阪正康/新潮新書)には、
第二次世界大戦が、ものすごいブラック・コメディだったことが、よくわかります。
あの戦争におけるミスマッチの一つは、
知的&緻密かつ正確に物事を進めなければいけない戦争という大プロジェクトにおいて、
「杜撰やデタラメ、妄想に満ちた精神論」などが幅を利かせていた点ですね。
珍しく優秀だった掘栄三という参謀本部・情報将校の視点から見た戦争は、
もうなんと言って良いかわからないほどの滑稽と悲惨が満ちあふれています。
旧・日本軍は、まず、戦争の状況を正確に把握することを怠っていました。
たとえば、相手にほとんどダメ−ジを与えていないのに、
「我が軍、米艦隊に壊滅的打撃を与えたり」のような見出しが新聞上を踊るというような。
昭和19年の10月に空母17隻を擁して沖縄の那覇市街などに空襲を仕掛ける
アメリカ海軍部隊に対して行われた「台湾沖航空戦」では、
結局、巡洋艦2隻に軽いダメージを与えただけだったのにも関わらず、
大本営は、
相手空母十一隻を撃沈、八隻を撃破、
多数の戦艦、巡洋艦を撃沈&撃破と発表。
デタラメな、都合の良い「空母撃沈」情報ばかりを鵜呑みにしたわけです。
さらに、その情報を元に、アメリカには、ほとんど空母が残っていないと考えて、
フィリピンで悲惨な負け戦を経験してしまったという 188ページ辺りの文章は、
ブラック・コメディ的には、教科書通りという皮肉な状況でした。
①戦争というシチュエーション × ②杜撰な情報管理&無謀な精神論=ブラック・コメディ
こういうことが現実化するなんて事態は、本当に避けなければいけませんね。
この「正確さが必要な情報管理」に「杜撰」を掛け合わせるミスマッチですが、
他のシチュエーションに置き換えると、非常に笑えるコメディになります。
例えば、まったく売れていないのに、売れているというデタラメの報告を鵜呑みにしたら、
会社は、ものすごく オモシロイことになってしまいます。
「ミスマッチ」って汎用性のあるテクニックなんですね。
By Yasunari Suda:2006年05月11日 15:22
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.yasunarisuda.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/60
